昨今、製造業において、顧客から求められる品質基準は以前にも増して厳しくなっています。一度でも不良品を出荷すればその企業の信用は失われ、ブランド価値の低下、失墜にもつながります。不良品を出荷しないようにすることは当然ですが、出荷してしまった後の対応によってその企業の価値が決まります。そこで、トラブルが発生した際の原因追求・製品回収を迅速に対応するには製造工程の記録を取り、トレーサビリティを高めることが重要となります。
本記事では、監視カメラとして活用されるネットワークカメラについて紹介し、工場の監視・録画が品質管理の向上にいかに役立つかを解説します。
製品の製造工程において、一定の割合で不良品が発生することは避けられません。重要なことは、「発生した不良品を出荷する前に発見すること」と「その不良品が製造工程の中のどこに原因があったのかを究明し、再発防止策を講じること」です。また、不良品が市場に流通してしまった場合には、製品回収などの対応のため、不良品が混入した製造ロットを確実に特定し、どの流通ルートを辿ったか追跡しなければなりません。
このような追跡を「トレーサビリティ」と言いますが、その基本は4M(Man・Machine・Material・Method)、すなわち作業員・機械設備・原材料・作業手順の管理・記録です。従来、これらの管理・記録の手法は、製造ロットや使用原材料を記した製造指示書や製造記録書が主流でした。
しかし、上記のような記録書や製造実行システムは文字情報が主であり、4Mを完全に把握することは困難であるという問題がありました。そこで近年注目されているのが、ネットワークカメラを用いた監視カメラシステムの導入です。
ネットワークカメラシステムとは、従来のITVカメラシステムと異なり、カメラ機器をネットワークに接続し、LAN回線経由でデジタル化された映像を伝送。社内のサーバやクラウドサーバに録画するものです。つまり、映像をリアルタイムに監視できるのはもちろんのこと、インターネットを介して遠隔地での監視や、多地点での同時監視可能となります。トラブルが発生した際も後から映像で4Mを容易に確認でき、記録書では分からないような不良原因も確実にトレースできます。
また、映像をデジタル化しているため、プラントデータとの統合や様々なAI技術との連携が可能となり、トラブル発生時の原因追求から侵入者の検知、作業員の安全確保にまで役立てられます。
トラブル発生時の原因追求から侵入者の検知、作業員の安全確保にネットワークカメラがどう活用できるかを事例から詳しく紹介します。
製品検査時や出荷後に製品の異常が発覚した際、製造記録書などとともに現場を録画した映像を一緒に活用すればより高度なトレーサビリティを実現できます。作業員は適切な技術を持っていたか、機械設備は頻繫なチョコ停などの異常がなかったか、原材料に間違いはなかったか、作業手順はきちんと守られていたかなどを映像で確認することで、素早い原因究明が可能。そこから不良品発生による影響範囲の特定や再発防止策も講じることができます。
外部からの侵入者を防ぐことも工場の品質管理では重要です。特に食品工場では、侵入者や悪意のある攻撃から食の安全を守る「フードディフェンス」の観点からも監視が重要となります。工場内の全域を24時間監視するのは人では難しいですが、ネットワークカメラシステムであれば工場に複数台設置されたカメラ動画を集中管理することにより遠隔地でも集中監視可能であり、また、AIを活用した侵入検知を行うことにより工場内に人が侵入した際にアラート発報させることも可能となります。
工場の運営において従業員の安全管理や現場の危険性を取り除くことは品質管理と同様非常に重要な課題です。AIで人の姿勢を自動検知することで、作業時に危険な動作はなかったか監視できるほか、現場を録画した映像を実際に見せることで従業員に安全管理の周知徹底を図ることができます。また、トラックやフォークリフトなどの車両と作業員との接触事故を防ぐため、車両走行区域に人が立ち入っていないかもカメラで検知可能です。