工場の防犯だけでなく、生産管理や設備保全などにも活用できる監視カメラ。しかし、実際の現場ではいまだに防犯目的だけで、映像を貴重なデータとして活かせてないケースもあります。
本記事では、どうすれば監視カメラ映像を工場管理に役立てることができるかを考察します。
ハイビジョン・フルハイビジョンの高精細ネットワークカメラが普及し、監視カメラの利用目的は工場の防犯だけではなくなりました。特に200万画素以上のカメラ映像なら、部分的に拡大しても精細さを確保できるため、生産ラインをただ監視する以外に、検査やバーコードを読み取っての品番管理などに応用することができます。
また、VMS(Video Management System)などと組み合わせることで、映像を1年以上もの長期にわたって保存することも可能となりました。
高精細ネットワークカメラとVMSを組み合わせれば、物流倉庫の動きを把握することで配置指示ができる他、出荷ミスが発生した場合には記録した映像から追跡調査といった品質管理の強化にもつながります。
生産現場では日々、ボトルネックになっている生産ラインを見直す活動をしていますが、ここでも監視カメラ映像は効果があります。生産に影響を及ぼす設備、作業員、原材料、作業手順のほぼ全てを映像一つから確認できるため、不具合原因の特定がしやすいからです。
このように生産管理や品質管理、設備保全といった分野にも活用できる監視カメラ。しかし、実際の現場で映像データを活用できているかと言うと、そうではないケースも見受けられます。
とりわけ食品業界では、食の安全を守るフードディフェンスの観点から多くの工場に監視カメラが設置されていますが、防犯と抑止効果がその目的で、設備保全や生産管理への利用はあまりされていないのが実情です。
映像データの貴重さは多くの人が理解できるはずですが、なぜでしょうか。
一つの原因は目当ての映像を探し当てるのに苦労するという、現実的な問題があります。例えば、先に挙げたようなボトルネック工程の不具合原因調査では、どこに問題が潜んでいるかは映像を見る側はわかりませんから、膨大な記録映像を長時間も見なければいけなくなります。
映像データ単独では活用範囲が限られてしまい、これを解決する手段が、在庫管理システムやPLCなどの他のシステムと連携することです。
近年ではデジタル・トランスフォーメーション(DX)の注目により、工作機械のIoT化が進められています。各種センサーや機械の指令役であるPLCから設備の稼働状況を収集し、データ化やモニタ表示ができますが、監視カメラ映像から不具合原因を特定するにはそれらと連携することが重要です。
例えば、PLCからエラー信号を取得したらカメラの映像を録画しているVMS上でその時点の映像にタグを記録するように連携できれば、映像を何時間も見ることなく、生産ラインに異常が発生した前後の映像を簡単に確認、分析できます。
また、記録した映像を在庫管理システムなどに製造ロット、シリアルナンバーごとに紐づけて保存すれば、出荷ミス後の追跡調査も該当する時間帯の映像をすぐに取り出せるようになります。
このように、トラブル発生時の映像をすぐに確認できるようになれば利便性が向上し、監視カメラの利用方法がさらに広がることが期待できるのです。
映像データと管理システムとの連携に加え、実際に現場で働く人たちの意識変革も映像データを生かすうえでは必要です。
営業支援システムなどのデジタルツールを導入しても、新しい仕事のやり方に抵抗感があったり、システム入力が習慣化されていなかったりして、せっかくの業務ツールを活用できていない事例を耳にすることがあります。
監視カメラシステムも例外ではありません。映像データと業務支援システムを紐づけていても、実際に現場で働く人が従来のやり方に固執していては、業務改善は一向に果たせません。
貴重な映像データを日々の業務にどう組み込めるかを、利用する人みずからが考えて実践し、その成果を実感することが大切です。マニュアル作成一つとっても、文章だけで説明した作業手順書より、映像が付け加えられた方が分かりやすいのは明らかです。
製造業でDXが盛んに提唱されているのは、ワークフローの刷新により業務効率化が達成でき、人手不足解消や工場管理の効率化に貢献できるからにあります。監視カメラによるDX も、業務支援システムなどとの連携というハード面、日々の業務に映像データを取り入れていく働く人の意識変革というソフト面、両面からの推進で工場管理がより高度化させることができます。