高い信頼性が求められる医療用機器や産業機械の分野において欠かせないのが、高品質なストレージデバイスです。そこで、同業界から注目を集めているのがSwissbit社のM.2 SATA SSDです。自社製造で厳しいテストをクリアしたこの製品は、医療現場での安定した動作を実現し、メーカーや設計者から高い評価を受けています。
本記事では、Swissbit社のM.2 SATA SSDがなぜ医療用機器、産業機械分野で重用されているのか、その特徴やメリットについて詳しく解説します。
※JFE商事エレクトロニクスは、Swissbit社の正規代理店です。
■M.2(エムドットツー)とは?
M.2は、コンピュータの拡張カードにおいて接続端子となる規格です。
M.2 SSDは、ケーブルを用いずにマザーボードに直接差し込むスロット方式を採用し、そのコンパクトな形状により、SSD自体や採用する機器本体の小型化・軽量化にも寄与しています。
M.2 SSDには、SATAとNVMeベースの2つのタイプがあり、それぞれインターフェースに違いがあり、メリットとデメリットがあります。
■SSDとは?
SSDは、HDDのようなディスクやモーターを使わず、フラッシュメモリの半導体で構成されたストレージデバイスです。HDDと比較すると、アクセスの速さに特徴があります。また、SSDに採用されているフラッシュメモリは、USBメモリやSDカードなどでも採用されている「不揮発性メモリ」であり、電源を切ってもデータを保持できます。SSDでは、主にNAND型フラッシュメモリが採用されています。
■SATAとは?
SATA(シリアルATA、サタ)は、パソコンや周辺機器の間でデータ転送を行うための接続規格の一つです。パソコンに内蔵されているHDDの接続をはじめ、2.5インチSSDや光学ドライブ、PS4の内蔵ストレージなど、私たちの身近にある機器において多くの接続にSATAが使用されています。
■M.2 SATAの特徴
M.2 SATA SSDは、3.5インチHDDや従来の2.5インチSATA SSDよりも小型軽量であり、スリムなノートパソコンや2-in-1タブレット、ハイエンドのデスクトップPCなどに広く使用されています。
└M.2 SATA SSDのメリット
M.2 SATA SSDは、NVMe SSDよりも入手しやすく安価なため、一般的なユーザーにとって手軽に導入できるストレージデバイスです。また、コンピュータに2.5インチSSDを取り付け不可の場合には、M.2 SATA SSDが代替として適しています。
もっとも大きなメリットは、発熱が少ないことでしょう。PCIeのレーン数を使用しないため、NVMe SSDよりも低い速度ではありますが、長時間使用する必要がある産業系の装置や温度が高い環境でも安定したパフォーマンスを維持できます。
また、SATAインターフェースは周波数が低いため、低温でも高温でもパフォーマンスに影響を受けにくいというメリットがあります。
M.2 SATA SSDは、従来のHDDと比べると3~4倍の帯域幅を持つことで、アプリケーションの起動やファイルの読み込みなどのディスクアクセスを速くしています。さらに、SSDの不揮発性メモリの特性により、データの読み書きが高速に行われるため、システム全体の応答性が向上しました。
└M.2 SATA のデメリット
SATAベースのSSDは、パフォーマンスの点でNVMe SSDに劣ります。また、新しいインターフェースに比べると、最大データ転送速度が低速です。
これらのデメリットにより、NVMe SSDに比べてアプリケーションの読み込み速度が遅くなる可能性があります。また、データの転送速度が低いため、大容量ファイルの転送に時間がかかることがあります。
さらに、M.2 SATA SSDは、PCIeレーン数を使用しないため、PCIeベースのSSDよりも高速なデータ転送ができません。
M.2 SATA SSDの最大転送速度は6Gbpsであり、HDDや従来の2.5インチSATA SSDと比較すると高速ですが、新しい規格であるNVMeに比べると低速です。しかし、実際のワークロードにおいては十分な速度を発揮し、容量も豊富であるため様々な分野で重用されています。
■NVMeの特徴
NVMe(Non-Volatile Memory Express)は、高速なデータ転送を実現するストレージの通信プロトコルです。主にPCIe接続を使用し、SSD側に搭載されたNVMeコントローラーによって高速な読み書きが可能となります。
└M.2 NVMe のメリット
M.2 NVMeの最大のメリットは、圧倒的な高速性能です。NVMeはSATAよりもはるかに高速な転送速度を実現し、読み込み速度や書き出し速度が大幅に向上します。これは、データ転送プロトコルがAHCIからNVMeに変わることにより、高速化が図られた結果となります。
主にサーバやデータセンターなど高速性能が求められる現場では重用されますが、このレベルのスペックを必要とされるインダストリー装置あるいは組込み装置自体が限定的であるといえるでしょう。
└M.2 NVMe のデメリット
M.2 NVMe SSDには、高速データ転送速度を実現する一方で、いくつかのデメリットも存在します。
まず、PCIe接続を使用しており、超高速でのテータ転送が行われるため、長時間の連続使用などでSSDが発熱しやすいという点が挙げられます。
高温状態になると、SSDが処理能力を制限して熱暴走を防ぐため、データ転送速度が低下する可能性があります。そのため、M.2 SSDを使用する際には、ヒートシンクやファンなどの冷却対策が必要です。
また、M.2 NVMe SSDは一般的な2.5インチSATA SSDよりも高価であることもデメリットの一つ。そのためインダストリー市場向けでは飛躍的に普及していないのが現状といってもいいでしょう。一般的にはこれほどの高速処理を必要とするケースが少なく、比較的安価なSATAのスピードがあれば事足りるケースが多いからです。
■「SATA」「NVMe」の違いと見分け方は?
SATAとNVMeの違いは、通信ドライバとインターフェイスが完全に異なる点です。SATAは、ハードディスクドライブ(HDD)用に設計されたAHCIドライバを使用しているのに対し、NVMeドライバはフラッシュ技術を使用するSSD専用に設計されています。
このほか、NVMeとSATAには互換性がありません。SATA SSDを搭載しているパソコンにNVMeのSSDを接続することは不可能です。そのため、NVMe SSDを購入する際には、自分のパソコンの仕様を確認し、互換性のある製品を選ぶ必要があります。
SATAとNVMeの形状はよく似ていますが、端子部の切り欠きによって判断できます。SATAは上下に切り欠きがあるのに対し、NVMeは下に切り欠きが1つあるのが特徴です。
■SATAⅢ、Ⅱ、Ⅰとは?
SATA I、SATA II、SATA IIIはそれぞれ第1世代、第2世代、第3世代のSATAインターフェイスです。
データ転送速度
SATAは完全に上位および下位互換性があります。つまり、SATA IIIドライブはSATA IIやSATA Iのポートに接続できます。ただし、ポートの速度制限が低いため、ドライブの最大速度は遅くなります。例えば、SATA IコントローラーがSATA IIIドライブで動作する場合、速度は1.5 Gb/sに制限されます。
一方、SATA IIコントローラーはSATA Iドライブで動作しますが、速度は1.5 Gb/sに制限されます。同じ概念が、SATA IまたはSATA IIを備えたSATA IIIにも当てはまります。このように、SATAポートは下位互換性を提供していますが、速度制限があることに注意が必要です。
■産業用SSDの選び方
産業用SSDを選ぶ上で、重要なポイントとなるのは「価格」「供給性」「信頼性」です。
価格においては、必要な性能や機能を満たすSSDをリーズナブルな価格で提供しているメーカーを選ぶことが重要です。ただし、あまりにも安価なSSDは、品質に問題がある可能性があるため、十分に検討する必要があります。
供給性の面では、需要に応じて必要な数量のSSDを確保できるかが大きな課題となります。特に大量のSSDを使用するようなプロジェクトでは、供給不足による遅延や予算超過を避けるために事前確認が重要です。
信頼性は、産業用SSDを選ぶ上で最も重要なポイントの1つです。産業用SSDは、業務用途で使用するため、信頼性が高く、長期間使用できることが求められます。熱を発する機械の多く集まる工場内など、過酷な状況下でも安定的に動作し続ける必要がある場合は、これまでにどのような製品に採用されているのかという採用実績も重要な判断基準となるでしょう。産業用SSDの選定には、用途や環境に合わせた検討が必要です。
■M.2 SATAのよくあるトラブル
M.2 SATAの使用において、以下のようなトラブルが起きることがあります。
よくあるトラブル1
まず、M.2 SATAを電源の不安定な環境で使用すると再起動しなくなったり、データの読み出しができなくなったりすることがあります。電源が突然切れた場合に、データが飛んでしまう現象は、データが完全に書込みが完了していないケースまたは何をどこに書いたかを管理しているテーブルが更新されなくなってしまうことによって起こります。
よくあるトラブル2
次に、M.2 SATAの中には、品質の低いNANDフラッシュが搭載されているものがあります。安価なSSDの場合、初期不良が起こりやすいため、注意が必要です。
いずれも上記のような事態に前もって対策を講じている製品を選ぶことで回避できます。特にデータの消失が大きな損害をもたらす分野、人々の安全に関わる分野などでは慎重に選定しなければならないポイントとなるでしょう。
■産業機械、医療用機械、ロボットなどの分野において、M.2 SATAが活用される理由
産業機械、医療用機械、ロボットなどの分野において、M.2 SATAが活用される理由は、PCIeの大きなデメリットの一つ「発熱」の心配が少ないことにあります。このためM.2 SATAはNVMeと比較した場合に高速性で引けをとるのですが、一方でPCIeの大きなデメリットの一つ「発熱」の心配が少ないのです。
産業機械の装置は主に温度に対する耐久性が求められる環境で使用されるケースが多くなります。PCIeは、85度~100度を超えるような熱帯地などでの利用に適しません。これは、発熱量が多くなると、熱暴走を回避しようと強制的に書き込みのスピードを下げる仕組みになっているからです。一気にパフォーマンスが悪くなってしまうため、安定性がよくありません。
一方、SATAの場合は、周波数が低いため高温の状況下でもパフォ―マンスへの影響をほとんど受けません。この安定性の高さが過酷な現場で重用される大きな理由となります。
産業、医療、ロボットなどの分野で使われる機械は、長時間連続稼働を要求されることが多く、高信頼性が求められます。M.2 SATAは、耐久性に優れており、極端な温度変化や振動、衝撃にも耐えうるため、産業機械や医療用機械などの厳しい環境でも安定したスピードでの処理が可能です。
信頼性が重要な医療用機器や産業機械の分野において欠かせないのが、高品質なストレージデバイス。そこで、同業界から注目を集めているのがSwissbit社のM.2 SATA SSDです。自社製造で厳しいテストをクリアした製品は、安定した動作を実現し、メーカーや設計者から高い評価を受けています。
Swissbit社のM.2 SATA SSDには、自社製造へのこだわりが大きな魅力の一つです。多くのモジュール会社がファブレスである同業界において、同社は100%自社で製造・テスト・出荷を行っています。
また同社は独自にコントローラーチップを開発しており、一部の製品に搭載されています。ハイパーストーン社(独)を買収したことで、ファームウェア/コントローラーチップのノウハウを取り入れた製品開発が可能となったのです。
その上で厳しいテストをクリアした製品を出荷することで、信頼性を担保しています。
Swissbit社のM.2 SATA SSDは、「安定したパフォーマンス」が大きな魅力です。
SSDの性能には、データが溜まってくると書き込み速度が落ちてしまうという問題があります。しかし、Swissbit社のM.2 SATA SSDは、バックグラウンドでガーベージコレクション処理を行い、データがいっぱいになる前に余裕を持って処理することにより、パフォーマンスの低下を最小限に抑えています。この機能において同社は先駆的な存在です。
高い性能と安定性が、産業機械や医療用機械、ロボットなどの用途に重用される理由なのです。
当社電子デバイス営業部がおすすめするSwissbit社のM.2 SATA SSD製品をご案内します。
SwissbitのM.2 SATA SSD X-60m2は、マスストレージを必要とする超薄型の組み込みコンピューティングアプリケーションに最適な、革新的なフォームファクタを提供しています。
Swissbitで提供するのは、2242(22mmx42mm)、2260、および2280 M.2フォームファクタのSATA 6Gb/s durabit™ X-60m2モジュールです。これらのモジュールは、最高の耐久性および持続した性能を提供します。
動作温度は、コンシューマーグレードでは0°C~70°C、インダストリーグレードでは-40°C~85°Cまで対応。NANDflashのタイプはMLCを採用しています。
主な利用用途
空調:空調メーカー様/コントローラー
産業用ロボット:産業用ロボットメーカー様
組み込みコンピュータ:車・カメラ・などありとあらゆる機器に搭載されるPCのストレージ
X-78m2シリーズは、データを記憶したり、ビデオを録画するだけでなく、ブートメディアとしても使用できます。この製品は、一世代前の製品に比べて約2.5倍の耐久性を誇り、信頼性や製品寿命の点でも最も厳しい要件を満たします。このSSDモジュールは、データ保持期間や温度保証範囲を犠牲にすることなく、あらゆる用途に適しています。X-78m2シリーズは、M.2 2242フォームファクタをベースにし、40GB~320GBの容量を提供しています。
高い耐久性は、最新世代の業界標準3D TLC NAND pSLCモードを採用することで実現されています。
搭載されたSATAインターフェースはSATA IIIに準拠しており、最大6 Gb/秒のデータ転送速度をサポートし、SATA IIおよびSATA Iとの下位互換性があります。
転送速度はシーケンシャルリードで最速560 MB/秒、シーケンシャルライトで最速490 MB/秒を実現します。ランダムアクセスの場合は、それぞれ73,000(リード)および86,000(ライト)IOPS(Input/Output per Second)を超えます。
主な利用用途
産業用PC、PoS管理システム、監視システム、交通・医療・ネットワーク通信向け装置
※3D PSLC とは
MLCをSLCのようにコントロールする技術で疑似SLCとも呼ばれます。SLCより安価で、MLC、TLCと比較すると信頼性が高くなります。
SLC (Single Level Cell) NAND Flash
1つのセルにつき1ビットのデータを保存することができるタイプのNAND Flashです。容量は少なくなりますが、信頼性が高く耐久性に優れ、データ処理速度も速いため主に産業用途に使われます。その分価格が高い傾向にあります。
MLC (Multi-Level Cell) NAND Flash
1つのセルにつき2ビットのデータを保存することができるタイプのNAND Flashです。SLCと比較してストレージ容量が大きくなります。データ処理速度はSLCより劣りますが、消費電力が低い特徴があります。価格、信頼性ともに、SLCとTLCの中間くらいになります。
TLC (Triple Level Cell) NAND Flash
一つのセルにつき3ビットのデータを保存することができるタイプのNAND Flashです。ストレージ容量を大幅に増やすことができます。
Swissbit社が提供するM.2 SATA SSDは、医療用機器・産業機器・ロボットなど、高い信頼性が求められる分野において、その信頼性向上に大きく貢献しています。
医療現場や生産ライン、工場全体の停止などは、開発者にとって一番の心配事でしょう。
Swissbit社が自社製造で厳しいテストをクリアした高品質な製品を提供することで、シビアな精密性の求められる現場での安定した動作を支えています。
Swissbit社のM.2 SATA SSDは、このような分野において、信頼性の高いストレージソリューションとして、ますます注目を集めています。