【半導体業界知識】半導体不足はなぜ起こったのか|原因と影響をわかりやすく解説

いまや 普段の生活の中でもよく耳にする半導体。近年大きく話題となったのは、2020年頃のこと。さまざまな業界で“半導体不足”が叫ばれ、世界的に大きな影響を及ぼしました。この“半導体不足”はなぜ起こったのか。本記事では、その原因と影響、そして今後の見通しについてもご紹介します。

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1.半導体不足はなぜ起こったのか

一般の方にとって半導体は、普段の生活の中で直接目にする機会は多くないでしょう。しかし、計算や記憶といった電子機器の主要な機能を可能としている存在で、テレビやパソコン、スマートフォンといった私たちの生活に不可欠な電子機器のほとんどに関与しています。

半導体不⾜によるマイナスの影響について2021年8月に帝国データバンクが実施した調査では上場企業115 社で判明したようです。 ※出典元:帝国データバンク

このように、今日において生活のあらゆる場面で必要とされる半導体だからこそ、半導体不足は複合的な要因によって需給バランスが崩れることで発生します。下記に、近年の半導体不足の要因と考えられる内容を一部ご紹介します。

 

<需要 の急拡大>

1-1.技術の進歩

近年“DX”や“5G”、“クラウド”といった新たなIT技術が数多く誕生し、急速に普及していきました。これら先端IT技術は半導体が支えていることから、半導体の需要も急激に拡大することになりました。

 

1-2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行

2019年末頃からCOVID-19のパンデミックにより、感染拡大防止のために在宅勤務やテレワークの導入が拡大しました。それに伴いパソコンやその他のエレクトロニクス機器の需要が急増。半導体の需要をさらに押し上げる要因となりました。

 

<供給量の低下>

1-3.偶発的な事故

半導体工場の事故や天災も半導体不足に拍車をかけた要因のひとつです。日本国内や海外ではここ数年で半導体工場や材料工場で火災などの自然災害が発生し、生産がストップするなど、半導体の供給体制に課題が生じました。

 

1-4.政治的要因

さらには政治的な動向も半導体不足に影響を及ぼします。2020年夏、米中摩擦が加熱し、傘下に世界的なファブレス企業ハイシリコンを持つ世界2位のスマートフォンメーカー ファーウェイに米国が事実上の禁輸措置強化を実施。これに起因したサプライチェーンの混乱も生じ、半導体供給量の減少につながりました。

このように、時を同じくして複数の要因が重なったことにより、半導体不足は引き起こされたといえます。

 

2.半導体不足の影響はどんなところに?

次に、半導体不足によって実際に起こった影響をご紹介します。前述のように、多くの電子機器に搭載されている半導体だからこそ、その影響は身近なところにもあらわれました。

 たとえば自動車は「走るコンピュータ」とも呼ばれるように、エンジン制御や運転支援技術など半導体が大きく関与しています。そのため半導体不足によって、多くの自動車メーカーが生産を停止、あるいは減産を余儀なくされました。また、新車の販売台数減少や「注文をしても納車は1年後」といった納車遅延、さらには新車が手に入らないことによる中古車市場の価格高騰なども引き起こされました。

加えて、私たちの生活を豊かにしてくれる高機能なテレビや洗濯機、冷蔵庫といった、日常的に使用する家電製品も半導体の恩恵を深く受けています。だからこそ半導体の供給不足により、自動車同様に製品の生産遅延価格の上昇が起こりました。また、新たな給湯器の入手や修理も困難になったことで、入浴など普段の生活を送ることへの支障も生じました

 

3.「半導体不足→半導体“製造装置”不足→半導体不足」の悪循環 

半導体が不足することによって、身近な製品だけでなく、半導体を製造するための装置も不足するといった事態も発生しました。

 「半導体を量産したい。けれども製造するための装置が足りないため、製造も思うようにできない…」といった状況が生じ、さらなる半導体不足をもたらす悪循環にも陥っていました。それも、半導体の供給量が伸び悩んだことから多方面での製品供給が一時的にストップされるほどに。

 かつては“産業の米(コメ)”とも呼ばれ重要視されてきた半導体ですが、その不足が私たちの生産活動に大きく影響を及ぼしている点で、今やその価値は“米”以上とも評価されています。 

 

4.現状と今後の見通し 

2023年時点で、半導体不足はまだ解消されたとはいえません。少しずつ生産体制が整ってきているとはいえ、工場での製造から市場に製品が出るまではタイムラグがあるため、スイッチのON/OFFのように即時的な回復は難しい現状があります。また、先端的な技術を可能とする半導体の製造は容易ではないため、こちらも製造には時間が必要です。

しかし、一般的な家電製品に使用される半導体などは需給バランスの改善がみられており、「購入後1年待ち」といった状況は解消傾向にあります。また、5GやAI、メタバースなどに関わる比較的新しい技術に対応した半導体は積極的に投資を受けていることから、「2024年以降に順次回復していくだろう」という見方もしめされています。

以上のことから、現時点(2023年時点)では「まだ回復したとはいえない」ものの、「回復傾向にはある」 といえるでしょう。

 

まとめ>

現代の生活に不可欠な電子機器やITと、それを陰ながら支えている半導体。あらゆる業態でDX化も推進されていることから、さらにその重要さは増していくでしょう。今後も半導体の動向には目が離せません。

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