【半導体基礎知識】シリコンサイクルとは

『パソコンや車がなかなか納品されない。原因は“半導体不足”らしい』―――最近では2020年頃に大きく報じられた半導体不足ですが、まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか? 今や私たちの生活に欠かせないスマートフォンやパソコン、車といった電子機器。これらに共通して使用されているのが半導体です。この半導体不足がなぜ起きるのか、その答えの一端が「シリコンサイクル」というキーワードに隠されています。そこで本記事では、シリコンサイクルの基礎知識や仕組みについてご紹介していきます。

基礎編-semiconimage

目次

 

1. シリコンサイクルとは?

シリコンサイクルは、経験則的に導かれた半導体産業における景気循環のことを指します。その内容としては、「半導体市場が3~4年周期で好況と不況を繰り返す」というもの。名称については、半導体に最も使用されている材料がシリコンであることから、一般的にシリコンサイクルと呼ばれています。

2. シリコンサイクルの仕組み

ではこのシリコンサイクルは、なぜ発生するのか。それは、半導体産業の進化と設備投資の問題から紐解くことができます。

2-1. 需要の急増から生じる好況期

半導体産業では技術革新が起こるスピードが非常に速く、次々と新しい製品が作り出されています。そのため半導体メーカー各社では、他社よりもいち早く優れた半導体を開発することを目指し、日々努力をしています。ここで努力が実を結び、新たな製品や技術の開発に成功すると、当然多くの人々がそれを求めるため、半導体の需要が急増することに。

しかし開発に成功した当初は、生産設備がまだ十分には整備されていません。そのため初期には生産が追いつかず、需要に応えるために大規模な設備投資や、需要を見越した部品の大量発注などをおこないます。結果として、半導体の価格は上昇し、半導体市場が好況期に突入します。

2-2. 供給過多により生じる不況期

上記のように、好況期には供給不足を解消するため大規模な設備投資に着手し、生産数を大幅に増やします。しかし、この設備投資は着手をしてもすぐに成果につながるわけではありません。製品の製造から軌道に乗るまでにかかる期間は1年半~2年ほどとされています。

1年半~2年という時間があれば半導体メーカー各社の技術レベルは横並びとなり、競争が激化していきます。これによって製品や技術が一般的なものとして普及し始め、需要が落ち着きを見せ始めることに。すると需要に対して製品は過剰生産の状態に陥り、価格が下落。需要と供給が逆転してしまうことで、半導体市場が不況期に突入してしまいます。

 このように、革新的な技術の登場で需要が急増する好況期と、設備投資が成果を見せ始めた頃に供給過多によって生じる不況期、そして再度技術革新が起こることで好況期に……という形で繰り返されることが「シリコンサイクル」の仕組みとされています。

3. これからの半導体市場について

ここまで、シリコンサイクルによって半導体市場の好況期と不況期が繰り返されることについてご紹介をしてきました。実際に冒頭で触れた2020年頃には、世界的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが加速したことに加え、新型コロナウイルスの影響によって重要拠点である東南アジア工場が一時閉鎖されたことで部品の供給不足も発生し、半導体不足の状態に。これを受けて、半導体市場はまた新たなステージへの進化が見込まれています。

現代社会における“あらゆる産業で不可欠な存在”として、「産業のコメ」とも称される半導体。好況期と不況期を繰り返してはいるものの、市場全体では右肩上がりで成長を続けており、2030年には約100兆円規模にまで市場が拡大するという予想も立てられています*。

* 経済産業省『半導体戦略(概略)』(2021年6月)より

まとめ>

本記事では、半導体産業における好況期と不況期を繰り返す景気循環「シリコンサイクル」についてご紹介をしました。半導体は現代社会に不可欠な存在だからこそ需要は高まり続けており、今後も景気循環を繰り返しながら成長していくことが予想されています。当社では、そんな半導体の解説をするコンテンツを多数発信しています。ぜひご活用ください。

 

 

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