複数のネットワークカメラとVMSで事故再発防止
近年、VMSと複数のネットワークカメラを使ったソリューションは、製造現場で「異常検知」としての活用以外にも、人身事故の「再発防止策」に活用の幅を広げています。
厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」によると、製造業の労働災害発生速報値データでは、令和3年の速報値は、前年比3.9%の増加が見られ、製造工場における労働災害防止が、喫緊の課題となっていることがわかります。
内閣府が提唱する「Society5.0」時代を迎えた今、製造工場の安全衛生管理においても、AI・IoT 等の最新技術の導入が推し進められています。安全衛生管理を効果的・効率的に実施する観点から、積極的に製造工場内に導入し、活用する取組が見られるようになりました。
複数のネットワークカメラとVMSで労働安全衛生法を遵守
事業主は、事業活動を行う上で労働災害の防止義務・補償義務・報告義務があり、現場での労働災害を防止する責任と義務があります。同時に、労働安全衛生法に基づき、安全衛生管理責任を果たさなければなりません。
法律違反がある場合、労働災害事故発生の有無にかかわらず、労働安全衛生法等により刑事責任が問われることがあります。事業主として労働者の安全衛生を守ることは「企業経営の根幹」となるものです。
事業活動において労働災害の法令遵守を徹底し、「安全第一」をベースに、労働者を守る1つのツールとして、VMSと複数のネットワークカメラの導入が挙げられます。
VMS(Video Management System)について、詳しい情報はこちらよりご覧ください。
映像予測値と実際の映像データ値の比較が容易
旧来、監視カメラ機能はレコーディングのみで、事故の判定根拠を解析・数値化出来ず、事故の「再発防止策」の精度が向上されないなどの課題がありました。
しかし、現在、製造業の安全対策の監視業務では、複数のネットワークカメラとVMSを使った新たな活用方法を導入することで、製造工場内の映像データを解析・数値化し、平常時と異常時のデータ値を比較することができます。
いつもと違う挙動を早期に精度高く検出し「安全対策」に繋げ、警報未満の変化をリアルタイムに網羅的・継続的に把握し、普段使っている各種データと連携することも可能です。
根拠も映像として可視化ができ原因特定や再発防止に直結
監視カメラの運用を管理する中央監視センターでは、複数のネットワークカメラで撮影した映像をリアルタイムにモニターし、VMSで映像を統合管理できます。製造工場内は危険なエリアが多いため、危険箇所を常時モニタリングし、映像解析することで、労働災害の未然防止に繋げられます。
また、VMSに保存された映像データは、クラウドやオンプレサーバーに蓄積され、事故が起きた際に、「過去の映像」と「現在の映像」を比較・照合し、事故の「根拠」や「原因特定」としての有効活用が期待できます。
映像データは、サーバーから迅速に取り出すことが可能で、事故の「再発防止策」として直ちに、社内の情報共有としても活用ができます。解決難易度の高い異常も予兆検知でき、根拠も映像として可視化されるため、原因特定や再発防止に直結する点が大きな導入メリットになります。
以下に、VMSと複数のネットワークカメラをどのように安全対策に取り入れられるのか活用事例をご紹介します。
製造工場内での安全対策活用事例
前述と同じく、厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」による製造業事故の型別死亡災害データでは、製造工場内の事故として件数が多い順から、1位「はさまれ・巻き込まれ事故」、2位「墜落・転落事故」、3位「飛来・落下事故」が挙げられます。
いずれも大部分がヒューマンエラーから来る労働災害であり、複数のネットワークカメラとVMS、そしてVMSに集めたデータをAI解析ソフトに学習させることにより、事故の再発防止策へと導くことが可能です。
はさまれ・巻き込まれ事故の再発防止策
製造工場内において、「はさまれ・巻き込まれ」事故の対策防止策として有効なのが、機械のローラー部分に、人が近づいた際の仮説予兆をVMSと連携したAIに学習させ、問題が発生した際に通知することです。複数のネットワークカメラで危険箇所を多角的にモニターし、事故再発防止に繋げます。
墜落・転落事故の再発防止策
墜落・転落事故は建設業が代表的でしたが、最近は製造工場内の高所通路を歩行中に、手すりと手すりのすき間に気づかず、墜落などのケースが目立ってきています。「墜落・転落」事故の対策防止策として有効なのが、危険箇所を複数のネットワークカメラで常時モニターし、人が入ってはいけない箇所に近づくと、問題の発生を通知する機能です。
飛来・落下事故の再発防止策
製造工場では機械の稼働中に、物が飛んできたり、破裂して人に当たり、事故につながるケースが多く見られます。この場合、「不慮の事故」の分類になり、現段階では「事故再発防止策」に繋げることが難しいですが、将来的にAI が関連した事故事例を抽出して、強調表示してくれる機能が期待できます。
例えば、日報などで、現場から抽出されたワードデータに加えて、気象データや季節性データ、地域データ、現場作業内容など、さまざまな外部データも取り込みながら解析を行い機械学習させます。同じ状況が起きた時に、事故が起きると学習させておけば、事前予測として注意喚起を行うことも可能です。
上記のように、製造工場では予測不能な事態が多々発生します。広い工場になると、大きな機械や物体による死角もあり、目視やビデオモニターだけでは、安全対策には不十分です。事故は一刻を争うため、取り返しのつかない事態に至る可能性もあり油断はできません。そこで、人の力だけでは、カバーしきれない工場内の「危険」を、複数のネットワークカメラとVMSで「安全」に変える必要があります。
まとめ
複数のネットワークカメラを使い安全対策に繋げる
労働者が仕事をするにあたって、安全で安心して働けるようにすることは、事業者としての責務です。このためにも、事業活動を行うと同時に、労働災害を未然に防止する措置を永続的に行なっていくことが重要です。
また、労働災害が発生した場合の、同種・類似災害を二度と繰り返さないようにするためには、「発生原因」を調査し、「再発防止対策」を考え、「防止対策」を実行・運用していく必要があります。その対策の1つとして、複数のネットワークカメラやVMS、そしてAI解析などを使い「事故の再発防止策」を講じることで、事故の再発を防ぎ、安全・安心な事業活動へ繋げることが可能となります。