概要
製鉄所や化学プラントなどの大規模工場では現場の操業データに基づいて生産状況を把握、制御しています。しかし、このような操業データは数値情報であり、生産状況の把握には十分ではありません。このような状況を解決するには操業データに現場の映像を融合させることが有効です。本記事ではカメラの映像を活用した操業管理が、安全操業と効率化にどう結び付くか紹介します。
センサーとカメラを別々に管理するのは非効率的
工場にはITVカメラが多数導入されており、映像による遠隔監視も行われてはいますが、映像情報としては有効活用されているとは言えません。
しかし、収集したデータとネットワークカメラを別々のシステムで管理していては、両者を有効活用できているとは言えません。なぜなら、操業データとカメラ映像を一括管理していないと、生産現場の状況を正確かつ瞬時に分析できないからです。
操業データで現場の状況を把握することはできますが、数値情報のみで生産状況を分析するのは、熟練の経験と技術が必要となります。特に異常発生時に、データだけで対応を迫られるのはオペレーターとしては多大な負担です。
そのような時にはカメラの映像によって現場の状況を確認することが大変有効ですが、別々のシステムで管理しているとそう簡単ではありません。異常を示すデータとそれに対応するライブ映像をすぐには探せないからです。
結果として、急激な環境変化に対応しきれず、安全操業・迅速な対応が実現できなくなるのです。
データと映像を融合するシステムとは
そのような課題を解決するソリューションが「プラントデータと動画の統合管理システム」です。このソリューションシステムでは、各種プラントデータと映像を融合することで、2つを同一画面に表示。工場内で起きていることを一元管理できます。
システムの構成例は、「SCADA」+「VMS」です。それぞれの特徴を解説致します。
SCADA
SCADAとは、設備稼働状況や制御設定値などのプラントデータを、ネットワークを介して収集、可視化することで監視および制御を行うシステムです。
各機器を制御、監視するPLCやDCS(分散制御システム)などと組み合わせることで、プロセスの制御と監視を可能にします。SCADAは分散するプラントデータを一元管理でき、必要に応じて設定値を変更することが可能です。
VMS
VMS(Video Management System)は、映像統合管理システムと呼ばれるソフトウェアです。ネットワークカメラの映像をVMSサーバーで録画・保存し、ユーザーがライブ動画や録画を複数のデバイスから閲覧できます。
VMSはカメラメーカーの種類を選ばずシステム構築でき、拡張性にも優れています。例えばAIシステムと連携すれば、侵入を検知した際のイベント記録やアラーム通知ができ、SCADAとの連携も可能です。
プラントデータと動画の統合管理システムが安全操業を実現
「プラントデータと動画の統合管理システム」の目的は、SCADAとVMSを融合し、データと映像を一元管理することです。
一元管理により、ダッシュボードに現在のプロセス値とライブ映像を同時表示します。化学プラントをはじめとした工場の安全操業を実現するには、設備に異常を認めた際、迅速かつ確実に対処しなければなりませんが、このシステムなら、センサーが異常を示した時に対応するカメラ映像を瞬時に確認できるため、生産現場で刻一刻と変化する状況を正確に判断できます。
熟練技術者による遠隔監視も可能
製造業では人手不足が深刻化しています。特にプラントの操業にはデータ解析など熟練した技術が必要であり、ベテラン社員の不足は多くの企業にとって喫緊の課題でしょう。
「プラントデータと動画の統合管理システム」の導入で、数少ない熟練技術者によるリモート操業を実現できます。リモート操業とは、各地に点在するプラントデータを一ヶ所で集中管理、リアルタイムに監視することで、熟練技術者が遠隔地から制御する体制です。
このような体制構築は、海外のプラントや工場を監視する場合にも役に立ちます。
さらに「プラントデータと動画の統合管理システム」では、過去のプロセスデータを蓄積することも可能です。過去のデータと録画映像を現在の状況と比較・解析に活用すれば、経験の浅いオペレーターでも適切な判断を下せるようになります。