2023.04.14

遠隔監視システムとは?導入のメリットと使い方|事故発生時の初動対応をサポート

概要

安全意識が高まったとはいえ、石油化学プラントや発電所では、いまだに事故は発生しています。事故を起こさないことも重要ですが、事故を最小限に抑えるためのリスクマネジメントも欠かせません。

本記事では、ネットワークカメラとデータを融合した遠隔管理システムが事故対応にいかに有効であるかを解説します。

目次

遠隔監視システムとは?工場管理に必要な理由

遠隔監視システムとは、遠く離れた場所からネットワークを通じて、リアルタイムで監視対象の映像や音声、センサー情報などを収集・分析するシステムのことです。

遠隔監視システムのメリットとは?工場管理者必見の導入効果

遠隔監視システムの導入には様々なメリットがあります。

 

遠隔監視システムによって、生産ラインや機械の状態をリアルタイムで把握できます。これにより、故障や不良品の発生を早期に察知し、生産性向上につながります。生産ラインや製品の品質に関する情報を収集し、分析することが可能になるため、製品の品質向上にも貢献します。

 

また、作業者の作業状況や機械の動作状況をリアルタイムで把握できることは大きな安心につながります。危険な状況や事故を未然に防止することは工場やプラントにとって重要な課題です。

重大事故を防ぐためには非常時の対応が重要

石油精製所や化学プラントでは化学物質を扱うため、事故を起こさないようにマネジメントすることは事業所にとっての責務です。しかし、産業施設においての事故はいまだに無くなっていないのが実状です。

 

消防庁、厚生労働省、経済産業省が共同でまとめた「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」(※1)の報告書によれば、令和2年に石油コンビナート等で起きた事故は267件。令和元年の284件に比べ減少しているものの、依然として火災や爆発、漏えいなどの事故は発生しています。

 

さらに平成23年から26年にかけては、化学プラントにおいて死亡者を伴う爆発事故が4件発生しました。

 

いずれの事故でも共通しているのは、定常作業時ではなく緊急シャットダウンなどの非定常作業で発生しているという点です。その原因となる背景には、「リスクマネジメントの不十分さ」「ベテラン技術者の不足」「技術継承の欠如による現場の対応力低下」があります。

 

事業所としては事故を起こさないために、これらの課題に向き合う必要があります。しかし、技術継承の問題はすぐに解決できるものではありません。特に化学プラントや風力発電所の運転は、熟練の経験や勘が要求される仕事です。

 

そこで期待されているのが、IoT技術を駆使した遠隔監視システムにより、設備運転員をサポートする仕組みです。

1:消防庁、厚生労働省、経済産業省「石油コンビナート等における事故情報(令和2年)」

https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/fieldList4_16/pdf/r03/01/shiryou1-1.pdf

人が近づけない状況の遠隔監視なら「プラントデータと動画の統合システム」が有効

事故が発生しても、遠隔地であったり有害物質が漏えいしたりと人が容易に近づけないケースが想定されます。そのような場合には、SCADAVMSを組み合わせた「プラントデータと動画の統合管理システム」が有効です。

 

SCADAは、PLCDCSなどの各機器と通信/ネットワークを構築することで、プラントデータを監視・制御するシステムとなります。一方のVMSは、ネットワークの映像をVMSサーバーで録画し、クライアントに映像を提供するソフトウェアです。この2つを組み合わせることにより、データと動画を同一画面で表示することができます。

「プラントデータと動画の統合管理システム」の特長

ここでは「プラントデータと動画の統合管理システム」の特長を、事故対応にどう使えるかを加味した上で紹介します。 

 

特長1 異常を示すデータと映像を同時に確認できる

このシステムの特長としてまず挙げられる点は、圧力計や流量計、温度計といった各種センサーから取得したデータと、ライブ映像を同一画面に表示できることです。データが異常を示した時やDCSが警報を発した場合、そのデータと対応する現場のライブ映像を一元管理するため、事故発生時の初動対応が素早くなります。

 

特長2 遠隔地の映像をリアルタイムに監視

広範囲に分散したネットワークカメラの映像とデータをリアルタイムに集計・表示できます。プラントや洋上風力発電所などの遠隔地であっても、遅滞なく高精細の映像を確認できることで、現場の状況を正確に把握できます。

 

特長3 過去のデータと録画をすぐに閲覧できる

プラントデータとカメラ映像は現在のものだけでなく、過去のデータと録画もすぐに閲覧可能です。これにより、過去に起きた同様の事故のデータと映像を比較・分析することができ、事故原因の究明をサポートします。

遠隔監視システム導入前に知っておきたいポイント

遠隔監視システムを導入する目的や、監視する箇所を明確にし、システムの種類や機能を選択する必要があります。

 

カメラの性能

カメラの解像度や視野角、低照度撮影能力など、カメラの性能を検討する必要があります。また、カメラの取り付け場所に合わせて、防水・防塵性能なども考慮する必要があります。

 

システムの機能

システムの機能についても検討する必要があります。例えば、映像解析機能やアラーム機能、遠隔操作機能など、必要な機能を選択する必要があります。

 

セキュリティ

遠隔監視システムは、遠隔からアクセスされることが多く、セキュリティ面に注意が必要です。例えば、暗号化通信の導入やアクセス制限の設定など、セキュリティ対策をしっかりと行う必要があります。

 

遠隔監視システムで事故対応をスムーズに

先述した化学プラントで起きた重大事故の一因は、リスクマネジメントと人材育成が不十分であったことです。

その点で「プラントデータと動画の統合管理システム」を導入すれば、経験の浅い技術者であっても、適切な初動対応が取れるサポート体制を構築できます。過去の異常発生事案も閲覧できるシステムであるため、情報共有といったリスクマネジメントにも十分に貢献できます。

化学プラントおいては、化学物質が流出すれば人体や生態系に影響を及ぼすことも考えられるため、現場の状況を正確かつ瞬時に把握できる体制構築が不可欠です。また、洋上風力発電所においても、落雷や塩害などで風車が損傷した時のために、遠隔地から損傷具合の確認や制御を可能とするシステムが必要です。

「プラントデータと動画の統合管理システム」は、その体制整備に資するものとなるでしょう。

まとめ

SCADAとVMSを組み合わせた「プラントデータと動画の統合管理システム」で徹底した安全管理を

プラントの設備老朽化や人材不足など、事業者にとっては事故発生時の対応整備は頭を悩ませるものでしょう。しかし、IoT技術の普及によりシステム面で技術者の初動対応をサポートできます。

現場の保安力を向上させたいという事業者は、「プラントデータと動画の統合管理システム」の導入を検討してはいかがでしょうか。

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